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その他(訳書など)

「言葉にとらわれた身体」(誠信書房)について

エレーヌ・ボノー氏による『言葉にとらわれた身体ー現代ラカン派精神分析事例集』(Le Corps pris au mot, 2015, Navarin éditeur)の共訳書(福田大輔監訳、阿部又一郎・森綾子訳)が、誠信書房より出版されました。

この本はフランスのラカン派女性精神分析家が臨床で出会った人々の症例が20ほど、報告されています。精神医学的な診断で言えば、うつ病や心気症、摂食障害やパニック障害、PTSDや線維筋痛症など

の他、妊娠や性的なトラウマ、共依存、暴力など、かなりバラエティーに富んだ問題が扱われている内容になっています。

ラカン派精神分析の理論と実践がどのようにつながっているのかを理解することができ、またフランスにおいて現代を生きる人たちが、どんなことで分析を求めてやってくるのか、分析によってなにを見つけることが出来るのか(出来ないのか)を知るのにも、とてもよい本だと思います。

 

 

その他(訳書など)

『底意地の悪い<他者>-迫害の現象学』(水声社)について

ジャック=アラン・ミレール監修、『底意地の悪い<他者>ー迫害の現象学』(Autre méchant, 2010, Navarin éditeur )の共訳書(森綾子・伊藤啓輔訳)が水声社より出版されました。

この本はフランスを中心とするラカン派精神分析家団体(AMP:世界精神分析協会)が主催した大き

な症例検討会のひとつ(2009年のもの)を、書き起こしたものです。パラノイア的な妄想傾向の強い人に対し、分析家たちがどのように取り組んでいるのか、約6つの症例が提示され、詳しく検討されています。

ラカン派の精神分析の実践、特に統合失調症へのアプローチに興味がある方などに、お勧めの本です。

 

コラム

ピエール・スクリャビン 短時間セッションに関する論文

2022/05/20

ピエール・スクリャビン(Pierre Skriabine)氏はパリで活躍したロシア系フランス人で、ラカン派の精神分析家です。ラカンは精力的に数多くの分析家を育てたと言われていますが、スクリャビンもそのうちの一人です。

彼は2004年、雑誌La Cause Freudienne56号に、「エビデンスか問いか?」(Évidences ou questions ?)という短かい論文を書いていますので、それを訳して載せたいと思います。

ここで扱われているのは、ラカン派の精神分析がなぜ短時間セッションであるべきと考えられるか、という問いです。

”短時間セッション”、と言っても、それが具体的に何分のセッションを指すのかは一概には言えません。これは分析家によって異なりますし、分析主体(分析を受ける人)によっても異なり、またセッションごとに変わるものです。ですので正確に言えば、これは”時間変動制のセッション”のことを指しています。セッションの時間に関して、あらかじめ何分の面接でいくらの料金が発生する・・と考えるのがスタンダードな考え方ですが、ラカンはそのようには考えませんでした。これには精神分析の扱うのが”無意識”であるということが、深く関わっています。

ちなみに、スクリャビンはこの論文のなかで、ラカンの1回のセッションは極めて短時間であり、例えば15分のセッションだった時彼自身は永遠の長さに感じたと言っています。ということは、スクリャビンとラカンの間では、15分のセッションでも長い方だったということになるでしょう。そしてそのようなセッションを、週に3回~4回、重ねていたと思われます。とは言え、彼はそのラカンの行っていた極めて短時間のセッションをスタンダードと考えるべきだと言っているのでもありません。その長さ・短さがどんなであれ、セッションの時間についてスタンダードを設定すること自体が、本来できない話である・・というのが、彼の言いたいことと思われます。

スクリャビンが分析のセッションは短時間であるべきと考える根拠が、この論文では三つあげられています。また短時間セッションにおける、彼の分析主体(分析を受けている人)のエピソードも、短いですがいくつか紹介されています。また改めてこの論文にまつわる解説を載せたいと思いますが、「パートタイムの分析主体は存在しない」(分析を始めると、セッションの時間だけではなく、それ以外の日常生活の時間でもいつも分析について考えるようになること)と書くなど、ラカン派分析のセッションの雰囲気が少し伝わってくるような面白いテキストです。

※ 出典は上記に記してあります。試訳であることを承知の上、ご利用下さい。

 

ピエール・スクリャビン論文

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