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コラム

発達障害について

発達障害について

発達障害は精神医学のマニュアル(DSM-V)の中で、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症(ADHD)、局限性学習症、チック症、吃音を含む幅の広い概念として定義されています。脳の機能が原因と考えられており、一般的には小児期までにそれらの症状を示しているものを指すことが多いようです。日常生活や社会的な場面でそれらが見られ、本人の生きづらさにつながることが多いと考えられています。そのうちの三つを取り上げます。

自閉スペクトラム症では、人と交流するよりも一人でいることを好む、コミュニケーション面でことばの裏を読んだりニュアンスを理解するのが難しい、視線が合わない、特定のものへの興味・こだわりが強い、予定が変わるとパニックに陥ってしまい臨機応変に対応できない、などが主な症状です。

※ 自閉スペクトラム症は、以前のマニュアル(DSM-IV)で自閉性障害、アスペルガー障害、または特定不能の広汎性発達障害と診断されていたものを含むカテゴリーです。非常に広い範囲に渡る症状をカバーする病名のため、上にあげた症状は一例に過ぎません。

注意欠如・多動症では、集中力を持続させて課題などをやり遂げることができない、整理整頓ができない、スケジュールを立てたり守ることが苦手、外的な刺激によってすぐに気が散ってしまう、そわそわして手足を動かしたり座っているべき時に離席してしまう、順番を待てない、人の話を遮って話し出してしまう、などが主な症状です。

局限性学習障害では知的な能力が一定の水準あると認められるにもかかわらず、読み・書き・計算などが苦手である場合を指します。読むのに時間がかかる、読んでいるものの意味を理解できない、綴りに問題がある、計算することや計算式を立てることなどが苦手、などが主な症状です。

 

主な治療法

医学的なアプローチと心理的アプローチがあります。医学的アプローチとしては向精神薬になります。心理的アプローチには療育や、心理療法があります。

 

当相談室でできること ①

当相談室では、お子様に関するさまざま相談を受け付けています。お子様自身と、もしくは保護者の方と面接することが可能です。

お子様の発達障害に関する相談では、まず保護者の方のお話を伺います。日頃お子様が家庭や学校でどのようなことに困っているのかや気になっていること等を教えて下さい。そのうえで保護者の方のご要望があれば知能検査を実施いたします。現在知能検査は、医療機関で発達障害かどうかの診断がされる際に、実施され考慮に入れられることが非常に多い検査です(※)。

 ※ 当相談室で知能検査を実施しても、お子様が発達障害かどうかの診断を下すことはできません。発達障害の診断が必要な場合は、(児童)精神科等をもつ病院やクリニックを訪れて下さい。

 

知能検査はその人がもつすべての能力をはかるわけではなく、またその検査時点で持っていると考えられるいくつかの能力の高さ低さを、はかるものでしかありません。また検査自体に時間がかかるためお子様の負担になり、今後検査やそれに似た場面への苦手意識を強めることになる等の可能性もあります。そのような理由で、やみくもに検査の実施をお勧めするわけではありません。

 

しかし検査の実施には一定の利点があるとも考えられます。それは特に学校や職場などの教育的・社会的場面において、個別の対応・指導や合理的な配慮を求めやすくなることです。知能検査は多くの人に実施した結果に基づいて標準化され作成されています。そのために同年齢の人と比べてお子様がどこの位置にいるのかということや、お子様自身のなかで得意と考えられる能力と苦手と考えられる能力について、一定の考えを得ることが出来ます。結果がはっきりと数値化されて出てくるために考慮されやすく、学校等で個別の支援計画など様々な支援が受けやすくなると考えられます。

 

当相談室では田中ビネ-V知能検査とWisc-IV知能検査を実施しています。お子様の状態や検査の目的に合わせてどちらかの検査を実施し、その結果からどういう配慮や対応をするのがよいと考えられるかを面接の中でお伝えします。

 

当相談室でできること ②

発達障害自体は脳の生まれつきの機能が原因と考えられています。しかし発達障害であることが一因となって、人との関わりにおいて自信を失いうつ状態になってしまったり、不安を強く感じて強迫的な行動を繰り返してしまうなど、ほかの様々な症状を伴ってしまい、問題が複雑になっている場合があります(二次障害)。

また精神医学的に発達障害という診断が下されている場合であっても、お子様の心理的な葛藤その他、無意識的なものによって、発達障害と思われるような症状が出ている場合があります。

どちらの場合も、保護者の方やお子様の話をよく聞いていくことを中心とする心理療法をすることで、複雑になっている問題が整理され、心理的なものからくる症状の原因が分かりその症状が消失したり、和らぐことがあります。

 

当相談室ではできないこと

・発達障害をはじめ、精神医学的な診断を下すことはできません。また、医療機関ではないため保険適用もできません。

・療育やソーシャルスキル・トレーニング(SST)は実施しておりません(お子様との面接ではお話を聞く以外にも絵を描いてもらうこと等はします)。

 

 

 

 

コラム

PTSDについて

PTSDは post traumatic stress disorderの頭文字をとったもので、心的外傷後ストレス障害のことです。これは生死にかかわるような大事故(列車や航空機事故)や大地震、レイプや犯罪、DVなどの体験をしたりそれらを目撃したことで、後になって突然記憶が呼び覚まされて大きな苦痛を感じたり、関連するような悪夢を見る、不安、気持ちが落ち込む、動悸がする、などの場合のことです。そのような状態が一か月以上続いた場合その診断が下されます。

 

主な症状をあげてみると、侵入症状(フラッシュバック。辛い記憶が突然甦ってきたり、悪夢となって反復する)、回避症状(出来事について考えたりすることを極力避けようとしたり、思い出してしまうような人や状況などを回避する)、感覚や気持ちの変化(感情や感覚が麻痺する、孤立感や興味関心の喪失)、過覚醒・過度な警戒心や自己破壊的な行動をとること、などになります。

それまでの人生経験では太刀打ちできないような、あまりに衝撃の大きい出来事に見舞われたせいで、こころの機能がもはやそれまでのように普通に働かなくなると思われますが、PTSDの症状の多くは出来事に対する反応として、とても自然なことであるように思います。

 

トラウマ(心的外傷)を生むような体験というものは、その人にとっては不意打ち、悪いサプライズに遭うようなものです。なにもこころの準備がないところに、いきなりそうした体験が向こうからやってくるわけですから。そのような恐ろしい不意打ちにもう二度と遭わないために、外の世界を出来るだけシャットアウト・シャットダウンするには感情や感覚は鈍麻した状態の方が無意識的にはよいのかも知れません。またそれとは反対に、無意識的に不意打ちに備えてつねに臨戦態勢でいようとする結果、過度な覚醒状態や警戒状態に至るのだと、考えることができます。いずれにせよ、過酷な体験や記憶から、自分を守るための症状であると説明されることが多いです。

 

さらに、なぜ自分がそのような辛い目に遭わなければならないのか、自問したくなるのは自然なことです。そうした大事故や大地震といったものは、そこに居合わせたのはたまたまの偶然であり、言ってみれば運命としか言いようのないものです。ですから非常に不条理に感じるに違いありませんし、空虚感にとらわれるのも不思議なことではありません。

 

またこのように大きなトラウマを生むような出来事は、人生における大きな落とし穴のようなものでもあります。それまでの人生で積み上げてきたもの、努力して築き上げた生活、人とのつながりが、一瞬で破壊されてしまったり、大事にしてきた信念や信条に大きな疑念が生じる体験です。なにか神とか運命のような、大きな力にすがりたくなったり、反対にそれらを恨んだり捨て去る契機にもなり得ます。無謀な行動や自己破壊的な行動をとってしまったり、孤独にさいなまれたり孤立感を覚えたりするのも十分に理解できることです。

特に犠牲者がでている場合は、なぜ自分が助かり他の人は犠牲になったのかと考えて混乱したり、自分が犠牲になればよかったのではないかと思ったり、罪責感にとらわれたりすることもあります(サバイバーズギルト)。

 

日本では2011年に死者だけでも1万5千人が犠牲となった東日本大震災が起こりました。また現在進行形で、世界中がコロナ禍という大災害に匹敵する状況にあります。これらの体験は生死にかかわる体験であり、少なくない人々にPTSDにつながるようなトラウマを生んでいる可能性があると考えられます。

 

・主な治療法

医学的アプローチと心理的アプローチがあり、医学的アプローチとしては向精神薬になります。心理的なアプローチとしては、心理療法や、厚生労働省が薦めている認知行動療法(暴露療法、EMDR)などになります。

 

症例の紹介

当相談室では心理療法を実施しています。そのためPTSDに関するラカン派精神分析的な心理療法のひとつの症例を紹介してあります。これは『精神分析の迅速な治療効果』にある症例を読みやすく直したもので、スペインの列車同時爆破テロによってPTSDを患ったミンナという女性の話になります。    PTSDの症例ミンナ(1/5)はこちらです。

コラム

うつについて

精神医学のマニュアルには“鬱病”の定義が載っていますが、おおまかに言うと気分の落ち込みや喜びの喪失、罪悪感といった精神的な症状や、食欲不振や不眠、疲労感などの身体にかかわる症状が5つ以上、2週間以上毎日続くものと説明されています。そのような鬱病までは至らなくても、“うつ”のような状態は、生きていれば誰でも体験しているのではないかと思います。また特にコロナ禍の出口がまだ見えない現在にあっては、うつではない人の方が少ないのではないでしょうか。

 

ずっとやりたかったことをあきらめざるを得なくなり、気力を失うこともありますし、大切な人との別れを経験して、しばらくなにも手につかないほどの衝撃を受けることもあります。職場の労働条件が悪くて追い込まれることもありますし、それとは反対に条件がいくらよくても、自分にとり過分な期待がかけられていると感じるとその重責から変調をきたすこともあり得ます(「昇進うつ病」など)。なにか倫理的に問題があるような秘密をこころに抱えても、罪責感情から気持ちが沈みこむことがありますし、自分の思ったようにものごとが進まない不全感から、うつになることもあるでしょう。これらは一例にすぎません。心理的な原因を探ろうとすれば、ひとりひとりまったく違う、多種多様な原因が見つかると思います。それもどれかひとつというよりも、複数のものが絡まり合っているかもしれません。

 

うつの状態から自分自身の力でなんとか抜け出ようとすることは、尊重されるべき姿勢だと思います。うつが軽い場合ならよいのかもしれません。しかしそうでない場合には、精神的に追いつめられて自殺などの取り返しのつかない極端な行為に至ってしまうこともあり得ます。ですからいつでも人に相談する勇気をもってほしいと思います。

 

主な治療方法

医学的なアプローチと、心理的なアプローチとに分けられるでしょう。医学的アプローチには、向精神薬を用いることが一般的だと思いますが、ほかに電気けいれん療法(ECT)、経頭蓋磁気刺激法などがあります。心理的なアプローチとしては、心理療法、認知行動療法、マインドフルネス、催眠療法、ゲシュタルト療法などがあります。医学的なアプローチは脳の神経細胞に薬物その他の手段を用いて働きかけるやり方です。心理的なアプローチは、その人のこころや精神といった目に見えないものの存在を想定して、それにことばを用いて働きかけることで原因を取り除こうとするものと言えるでしょう。うつを抑える薬を飲みながら心理療法をするなどの、両方のアプローチを組み合わせることもよく行われていることです。

 

この相談室で行っているのは上記の心理的アプローチの中にある心理療法になります。それでこのコラムの最後に、心理療法の症例をご紹介しようと思います。症例報告については守秘義務のことを厳密に守ろうとすれば事例小説といわれるフィクションを作る必要もでてきますが、すでに出版されている本からの引用であれば問題ないでしょう。ここではうつ病の女性の精神分析的な心理療法の例を、紹介しようと思います。これはフランス人臨床心理士で精神分析家でもあるパスカル=アンリ・ケレールが『うつ病』(白水社クセジュ文庫)という本の中で紹介しているケースを、読みやすくしたものです。

 

オデットは主治医に勧められて臨床心理士との面接にやってきました。彼女は主治医がいろいろ医学的な治療を試みてくれたものの、どれもうまくいかなかったと考えています。ここ十年来、毎日のように亡くなった父親を思い出して淋しい気持ちになり、悲嘆にくれて泣いていました。このようなうつ状態から解放されることしか頭にありませんでした。彼女はひとりでは行動できず夫の運転する車で面接に通ってきました。

 

それでも臨床心理士の言うように、“頭に浮かんだことをできるだけすべて、きたんなく話す”という自由連想を受け入れ、心理療法は始まります。そしてだんだんと娘のことや自分が小さかった頃のことを語るようになります。また、オデットはスーパーで働いていたのですが、いつのまにか建築家である姉と自分を比較しながら話をする癖があることに気がついたり、両親は裕福でなく姉の教育費しか工面しなかったと思っていることなどを語るようになっていきました。

 

そんなふうに分析をすすめるうちに、次のようなことが明らかになりました。オデットの母親が子どもはひとりだけで充分だと思っていたことや、オデットよりも姉をいつも高く評価していたこと。そういったことすべてを辛い気持ちでみていたけれども反発せずに黙って我慢していたことです。というのは父親にだけはそれらのことを話すことができ、父親がどこか共感してくれていると感じることができたからでした。オデットは出産して育児をしていくうちにそういった過去のもろもろを忘れて過ごしていたのですが、父親の死がきっかけとなって、以前の辛い記憶が呼び覚まされてしまい、うつ病の診断を受けるほどの状態に追い込まれてしまったのでした。

 

オデットは自分が父親にだけは本心を打ち明けていて、ある意味父親と秘密を共有して生きてきたことに気がつき、愕然とします。母親が自分に対してとても冷酷で不公平で意地悪だったのだと、思うようになります。それまでとは違って、オデットは家庭で暴君的に振る舞ってきた母親に対して言いなりになるのではなく、反発することばを見つけるに至ったと言います。この治療の作業が終わりに近づいた頃、心理士はオデットに「あなたはまるで、お父さんに対して伝えたかったことを、ここで私に語ったようですね」と伝えます。彼女は笑って「本当にその通りだわ」と答えたということです。

 

オデットの面接は一年弱のあいだ行われたと説明されています。こころの内を話してみることで自分がずっと母親との関係で苦しんでいたことや、父を失ったことがどんな意味をもっていて、どれほどの大きなことだったのか、はじめてはっきりと理解できたと思われます。子どものころはすべてがもっと渾然としたかたちで体験されていたはずです。自分と姉とを比較して生きることも、やめようと決めたかもしれません。オデットはこのようなこころの作業のあいだ、さまざまなことを想起しては、感情が激しく揺れ動いたりうつが強まったりした時期もあったかもしれません。しかしうつから回復して今後よりよい人生を歩むためには、それも受け入れることができたのだと思います。

 

参考文献:うつ病-回復に向けた対話、パスカル=アンリ・ケレール著 阿部又一郎、渡邊拓也訳/井原祐子協力、白水社 文庫クセジュ

 

 

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