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コラム

「ウィニコットとラカンに学ぶ」について

「ウィニコットとラカンに学ぶ」という本が発売になっています(筒井亮太訳、日本評論社)。

 

ウィニコットはイギリスの小児科医で精神分析家でした。「移行対象」(スヌーピーのライナスの毛布のような)や「ほんとうの自己」、「ほどよい母親」などのことばを聞いたことがあるのではないでしょうか。

いっぽう、ラカンはフランスの精神科医で精神分析家でした。「フロイトへの回帰」や「想像界・象徴界・現実界」、「父の名」など、彼もまたその後の精神分析の世界に大きな影響を与えました。

 

この本は、8人のイギリスとフランスの分析家たちが力のこもった原稿を寄せています(デボラ・アナ・リウプニッツ、アンドレ・グリーン、ジェームズ・E・ゴーニ―、アラン・ヴァニエなど)。ラカンとウィニコットの交流やそれぞれの人となりについてなどの伝記的なことから、両者が生みだした基礎的な概念のちがい、両者に深く影響を受けた分析家はどんなことを考えどんな精神分析を実践しているのかなど、知ることができます。

 

両者ともに言えることとして思ったのは、ひとりの精神分析家の思想を全体的に理解するのには、相当な努力がいるのだろうなということです。ウィニコット、もしくはラカンのどちらかだけでも全体的に理解できるなら、それはかなり素晴らしいことだと考えられます。

またこの本にはいくつか臨床例が載っていて、理解を助けてくれると思いました。とくに興味深かったのはリウプニッツやゴーニ―が報告する症例でした。なぞ解きのようなところやドラマチックな性格をもっているからかと思います。

 

 

コラム

「見えない違い」私はアスペルガー ジュリー・ダシェ原作

見えない違い 私はアスペルガー  ジュリー・ダシェ(原作)、マドモワゼル・カロリーヌ(作画)、原正人(翻訳)、花伝社

 

この漫画の主人公は27歳のマルグリットで、会社勤めをし、恋人がいます。でも彼女の心が本当に落ち着くのは自宅にいる時くらいで、はた目にはそう見えなくても日常生活のあらゆる場面で気苦労のたえない女性です。

いつもと同じ行動が取れないと落ち着かなくなってしまう。人の話し声をはじめ、時計の針が進む音やハイヒールの音など、物音が全般的にうるさく感じやっていることに集中できない。自分なりのこだわりがあり周りの人の興味に関係なく熱っぽく語ってしまう。人の言葉の裏を読むのが苦手である。急に疲労困憊が襲い、何もできなくなる・・等々。

職場に馴染めず恋人ともけんかをするような毎日ですが、ある日自身の悩みを検索しているときにアスペルガーという言葉を発見します。

 

そしてその後、彼女の悩みを理解できる医者と出会い、自閉症と診断されます。その診断にマルグリットは心からほっとします。外からは「見えない違い」、その存在を、生きてきて初めて正当に認められたと感じたのです。

 

それを機に彼女は自分のその見えない違いを大切にしながら、前向きに生きていくようになります。彼女の生きる世界が急に生きやすく変化するわけではありません。しかし彼女自身は変化します。説明しても理解できない様子の恋人や職場とは別れ、違いを理解しその味方になってくれる新しい人間関係を築いていく・・、大雑把に言えばそういうお話です。

 

私が読んでいてとても印象的で嬉しかったのは、診断を受けた後にありのままの自分が人に認められたと感じ自分でも自身を肯定することができ、恋人とシャンパンでお祝いをすること(「自分の限界に耳を傾け・・・私自身に敬意を払うの」と言っています)。またそれからしばらくして、「見えない違い」を「正々堂々と引き受けるというマルグリットなりの宣言」をする場面です。

 

「あなたは変わっている」、「なんで他の人と同じようにできないんだ」と言われて傷ついた経験は誰でも一つはあると思います。この漫画にはアスペルガーである主人公の生きづらさやそこからの変化、自分をよりよく発揮しながら生きていく様子が描かれています。人のひとりひとりの違いを認めたりそれを自身が引き受けることについて、普遍的なものがあるお話だと思いました。

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