ラカン派の精神分析団体について(AMPやNLS)
ラカン派の精神分析の団体には様々なものがありますが、その中でも代表的な位置をしめる団体を紹介します。
まず、もっとも大きな統括的団体として、
L’Association Mondiale de Psychanalyse(AMP) 「世界精神分析協会」があります(World Association of Psychoanalysis、WAPとも言います)。1992年パリで創設され、「ラカン的オリエンテーション」と呼ばれるものに基づく精神分析の研究や実践にかんする枠組みを保証している団体です。ラカン派ではない精神分析家の組織 International Psychoanalytical Association (IPA)に次ぐ、世界的規模の組織になります。
HP L’Association mondiale de psychanalyse – AMP
2025年現在、AMPは33か国にまたがる7つの大きな団体(エコール)を傘下にもちますが、その中からふたつ、日本の方にもつながりがあるECFとNLSについて取り上げてみましょう。
1 L’École de la Cause freudienne(ECF) 「フロイトの大義派」
1981年パリにて、ジャック・ラカンの弟子であるジャック=アラン・ミレールが中心となり設立しました。2025年現在約500名の分析家を擁しています。フロイトの名前を精神分析の大義・原因(Cause)に掲げていて、パリ第8大学精神分析学部・大学院での教育活動をはじめ、理論と臨床にかんする様々な訓練を提供しています。主にフランスやベルギーで活動する分析家が加入しています。
いまの事情はわかりませんが、昔は日本の哲学・臨床心理の学生や精神科医がラカンの精神分析を留学して学びたいという場合には、パリ第八大学・大学院精神分析学科に所属し、ECFの分析家たちと交流をもつケースが多かった印象があります。
HP Accueil – Ecole de la Cause freudienne
2 New Lacanian School(NLS)
2003年分析家の養成や分析の伝達を目的として設立された、AMPに属する団体のなかで一番若い団体です。2025年現在約250名の分析家が在籍していますが、その国籍は様々で、イギリス・アイルランド、スイス、ポーランド、ブルガリア、デンマーク、ロシア、オーストラリア、カナダ、ギリシャ、イスラエル、日本などになります。NLSの年に一度の大会は国際色が豊かで、そのときの国際状況を反映した話題(戦争やテロなど)もあがるなど、大変刺激的で勉強になります。